タイルの品質を左右する第一歩は、原料となる鉱石(長石・陶石・粘土など)の採掘です。地下から採取した原石には、含まれる成分や水分量にムラがあるため、以下のような工程で徹底的に選別します。
この徹底した選別と前処理によって、後工程でのひび割れや変色を未然に防ぎ、安定した品質のタイルづくりを可能にします。
タイルの美しい色合いを生むのは、金属化合物をベースとした顔料です。コバルト、クロム、マンガンなどの化合物は、焼成時の高温環境で化学反応を起こし、鮮やかな発色をもたらします。主な工程は以下の通りです。
この段階で色のバラつきや反応不足をつぶしておくことで、本番工程での不良率を大幅に低減できます。
選別・安定化をクリアした原料と顔料を、最終的なタイルに求められる性能や色調に合わせてミル内で調合します。ポイントは「均一性」と「再現性」です。
原料・顔料の厳選と調合は、タイル製造全体の“土台”にあたる重要工程です。ここでの品質管理が甘いと、成形や焼成の段階で不良が頻発し、結果的に納期遅延やコスト増加につながります。次章では、この泥状原料を用いた「成形の精密さ」を解説します。
成形工程では、水分を含んだ泥状原料を「真空押出成形機」に通し、金型の形状に合わせて押し出します。真空状態で行うことで、原料内部の気泡を取り除き、成形体の密度を均一化。これにより、強度不足や焼成時の割れを防ぎます。まるでパン生地をゆっくり発酵させるように、素材のコンディションを最適化しながら形を整える工程です。
金型はタイルの仕上がり寸法や表面模様を決定づける重要部品です。製品ごとに微細な凹凸やエッジのラインを正確に再現するため、以下のような管理を行います。
この精密管理により、製品間でのサイズズレや模様のブレを最小限に抑えます。
成形時に残存した微細な気泡は、焼成段階で膨張・破裂し、ひび割れや凹みの原因に。そこで、以下の対策を講じます。
これらの対策を組み合わせることで、不良率を大幅に低減します。
成形直後のタイル胚(素地)は乾燥・焼成前の最初の検査拠点です。主なチェック項目は以下の通りです。
問題があれば金型や原料配合にフィードバックし、即時に調整を行います。
成形工程は、タイルの強度・寸法精度・デザイン再現性を左右する“中核”のステップです。真空脱気から金型管理、成形後の検査まで、多岐にわたる精密作業を連携させることで、後工程での手戻りを防ぎ、高品質なタイルを安定生産します。
次章では、第3章「乾燥工程の慎重さ」に進み、含水率管理とひび割れ防止の取り組みをご紹介します。
成形直後のタイル胚(素地)は、まだ多くの水分を含んでいます。このまま焼成すると、内部の水分が急激に蒸発してヒビ割れや反りが発生するため、「含水率」を適切なレベルまで下げることが必須です。含水率が均一でないと、同一バッチ内でも仕上がり品質にバラつきが生じます。
乾燥炉(ドライヤー)では、温度と湿度を段階的に制御しながら乾燥を進行します。一般的には次のようなプロファイルを用います。
中期乾燥:温度を上げつつ湿度を下げ、内部の水分をコントロール。
仕上げ乾燥:高温・低湿度で最終含水率に調整し、焼成準備完了。
各段階の温度変化や風速管理を自動制御装置で行い、工程ごとに微調整しながら均一な乾燥を図ります。
乾燥工程は、タイルの強度や平滑性を左右する極めて重要なステップです。含水率コントロール、乾燥炉のプロファイル管理、自然乾燥の併用、そして厳密な乾燥後チェックを組み合わせることで、ヒビ割れや反りのない安定品質を実現します。次章では「長時間焼成で生まれる強度」について解説します。
タイルの焼成には「トンネル窯」が用いられ、成形・乾燥済みの素地を専用台車に積み、トンネル状の炉内を自動で連続移動させながら高温で焼き上げます。連続焼成方式により、均一な窯内環境が維持され、大量生産に適した安定した品質を実現します。
焼成工程では、以下の2つの雰囲気を段階的に切り替えながら焼くことで、タイルの性能と色調を最適化します。
両者を組み合わせることで、タイル表面の美観と内部の機械的強度を両立させます。
トンネル窯内では、数℃単位で温度を制御し、以下のようなプロファイルで進行します。
温度の立ち上がり速度や滞留時間、雰囲気切り替えタイミングは炉ごとに最適化されており、製品ごとの特性に合わせて細かく調整されます。
焼成後のタイルは顕微鏡(SEM)やX線回折(XRD)解析などで内部の結晶構造を評価し、次のポイントを確認します。
これにより、製品が設計どおりの耐荷重性や耐久性を備えているかを定量的に裏付けします。
焼成工程はタイル製造における“心臓部”とも言えるステップです。トンネル窯での連続焼成、酸化/還元焼成の組み合わせ、緻密な温度・雰囲気制御、そして焼成後の内部評価を経て、タイルは高い強度と美しい仕上がりを同時に獲得します。次章では、最終章「品質検査・選別の徹底」に進み、出荷前の最終検査プロセスをご紹介します。
焼成後のタイルは、まず目視および機械検査装置によって外観と寸法を厳密にチェックします。
不良が見つかった場合は、製造記録と照合し、該当ロットの成形条件や焼成プロファイルを再評価します。
湿式押出製法では、焼成後に二枚が連結した状態で出てくるため、手作業で丁寧に分離します。
この選別作業により、建築現場での仕上がりイメージと品質要件を確実に満たす製品を提供します。
最終的に合格したタイルは、施工中の破損を防ぐために慎重に梱包されます。
梱包仕様書と出荷伝票を厳守することで、現場到着時のトラブルを未然に防ぎます。
最終章では、焼成を終えたタイルが出荷されるまでの検査・選別・梱包工程を解説しました。外観・寸法検査で品質を保証し、手作業で丁寧に割り・格付けを行い、安定した梱包で現場へ届けます。これらの厳格なステップが、高品質なタイルをお客様にお届けする最終防波堤となっています。
タイルが完成するまでには、多くの工程と時間が必要です。しかしそれは、寸分の狂いも許されない寸法精度や、長期間にわたって美しさを保つ耐久性を実現するために不可欠なプロセスです。
本コラムでは、原料調合から焼成・検査に至るまで、タイルづくりに時間がかかる理由を5つの視点からご紹介しました。
リペアタイルラボでは、こうした伝統的な製造手法による高品質なタイル製作はもちろん、デジタル技術を活用した全く新しい製造アプローチにも取り組んでいます。短納期・小ロット対応・カスタムパターン生成など、従来では難しかった仕様にも柔軟に対応可能です。
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